- たる
- I
たる(助動)〔古語の断定の助動詞「たり」の連体形から〕(1)資格を表す場合に用い, 「…である」の意を表す。
「師〈たる〉に値しない」「かりにも大学生〈たる〉者のなすべきことではない」「荀(イヤシク)も男児〈たる〉者が零落したのを恥づるとは何んだ/浮雲(四迷)」
(2)「…たるや」の形で, 特筆に値すると思われる事柄などを話題にする時に用いる。「その風体〈たる〉やさながら弁慶の如く…」
→ たり(助動)IIたる【垂】〔「垂水(タルミ)」の略〕滝のこと。IIIたる【垂る】※一※ (動ラ四)(1)水滴がしたたり落ちる。 たれる。「白ひげの上ゆ涙~・り/万葉 4408」
(2)ものの一端が下に垂れ下がる。「(鼻ハ)先の方少し~・りて色つきたる事/源氏(末摘花)」
※二※ (動ラ下二)⇒ たれるIVたる【樽】酒・醤油・味噌, あるいは漬物などを入れる木製の容器。V「漬物~」「一斗~」
たる【足る】(1)不足や欠けたところがない状態になる。 たりる。「お金が~・らない」「努力が~・らない」「望月の~・れる面わに/万葉 1807」
(2)それにふさわしい資格や価値がある。 たりる。「将となすに~・る人物」「論ずるに~・らぬこと」「とるに~・らぬこと」「頼むに~・らぬ」
(3)満足する。「~・ることを知れ」
(4)「たらぬ」の形で, 頭の働きが悪いの意を表す。「すこし~・らぬ人を賭にして/浮世草子・一代男 8」
(5)一定の数量に達する。「御年まだ六十にも~・らせ給はねば/大鏡(師輔)」
〔現代語では, 慣用的用法のほかは, 上一段活用の「足りる」が一般に用いられる〕足るを知る〔老子〕身の程をわきまえて, むやみに不満を持たない。→ 知足
Japanese explanatory dictionaries. 2013.